住む人の言葉

木に包まれたあたたかい平屋の家。 池尾家の暮らし。

「平屋で土間があり、薪ストーブをつけたい」というのが、夫婦共通の思いでした。住みはじめたのは、2020年の8月初旬から。丸1年ほどかけてつくった家ですが、まだ完成ではありません。和室の引き戸をオイルフィニッシュしていなかったり、外構も途中なので、これから徐々に仕上げていきます。家庭菜園など、庭造りも楽しみです。

キッチンは暮らしの舞台。

食事は家族をひとつにする大切な時間です。私自身、楽しみながら料理がしたいと思っています。子育てや家事で時間をかけられないこともありますが、短い時間の中でも自分の好きなモノに囲まれて暮らすということは、モチベーションを上げることにも繋がります。器が大好きなので、陶器市や雑貨屋さんに行って器を揃えています。お気に入りの器や使いやすい調理道具、かわいい小物などが並んでいるとそれだけで楽しい気持ちになります。収納は器や小物などを飾るスタイルにすることで、キッチンにいる時間が心地よくなり、よかったと思っています。

ふたりでキッチンに入っても、窮屈にならない広さ。
作業場が前と後ろにあることで、ゆったりと快適に調理ができます。

見せる収納と隠す収納を使い分ける。食器は見せて収納することで、
「買ったけど、使い忘れる」ということが減りました。

以前住んでいた家のキッチンには、収納に扉がついていたのですが、調理をする際に扉を開け閉めするのが意外と面倒だったので、オープンにしました。オープンにすることで、取り出しやすいこともありますが、どこに何の食器があるか一目で分かるので料理に合わせて食器をすぐに選べるのがいいところです。扉があると、ついつい手前ばかりを選びがちで、奥にある食器は使わないことも多かったので。オープンにしたことで使わない食器がなくなりました。もし今後、棚に扉を付けたくなったら、あとで付けることができるように設計されています。見せる収納として、器を飾るように収納することができるのはパントリーがあるからです。食料品のストック、調味料、鍋、調理道具などはパントリーに入れています。こうすることで、動線もきちんとできて、キッチンが使いやすく、整理しやすいカタチになっています。

手間をかける工程が、おいしさやあたたかさを、一層引き上げてくれる。

僕は普段、料理はしないのですが、時々気が向いた際に薪ストーブで料理を作ります。妻は、僕がつくった料理は「自分がつくるよりも美味しい」と褒めてくれます。職人気質のせいか、ついつい凝って手間をかけて作ってしまいます。最近では、ピザを生地から作りました。ピザの上にのせるためのベーコンは、自家製です。2日前から塩やハーブをまぶして下ごしらえをした豚肉を燻製にして作ります。

薪ストーブは、火を起こすまでに手間がかかります。薪は買ってくると費用がかさむので、大工仕事で出る端材や、造園屋さんからもらった樹木の切れ端などを薪にしています。どこかに薪になるものがないか、ずっとアンテナを張っておく必要があります。そこから、ストーブに入るサイズにカットする手間もかかります。スイッチを押せばすぐ暖かくなるのではない、その手間を楽しむことも含めて薪ストーブのいいところです。簡単なことや便利なことを追求するより、手に入れるまでの道のりや手間をかける時間を時々楽しむ方が、暮らしの豊さが倍増する気がします。

「窓をオープンにできる」って、大きいですね。
当たり前にできることが、幸せなことです。

夏場は風通しが良いので、キッチンの窓とバルコニーの窓を開ければ涼しい風が入ってきます。光と風が入るので、家中開放的に過ごせます。以前住んでいた家は日当たりが良くないし、窓を開けたら隣と目線が合う状態だったので、窓を開けることがほとんどなくて暗かったんです。だから、家を建てて、日当たりが良く、窓もオープンにできるようになって生活が随分変わりました。純粋に生活を楽しんでいる実感があります。閉塞感がないので、家の中でリフレッシュできます。

気持ち整える場所や時間を持つことは、
仕事や家庭にもいい影響になると思います。

僕は月に 1、2回ほど茶道を習っています。茶道ではお茶をたてるところは、見て憶えます。お茶をたてるまでの所作(振る舞い方)は教えてもらえますが、細かいところまで教えてもらえないので、先生の動きをよく観察しないといけないんですね。それと、お茶を飲んでもらう相手のことを考えないといけない。だから、自然と、人を敬う態度や佇まいが身に付きます。それから、茶道特有の茶碗や着物だけではなく、建築、庭、花、書、食など、日本文化を凝縮したものが茶道なので、日本の文化を身体で感じることができます。掛け軸に書いてある言葉や、使う道具などに四季を感じる感性も磨かれます。こんな風に言うと、とても堅苦しいものに思うかもしれませんが、そんなことはなくて、実際には、あわただしい日常を少しだけ忘れて、心を落ち着かせることができるリラックスの時間になっています。最近、家紋入りの着物を作って新春のお茶会に参加しました。自宅の和室も、普段の生活から頭を切り替えて、心を整える場所にできたらいいなと思います。

住幸房が伝えたい、家づくりのポイント

給湯器には太陽熱を利用して、1 つのエネルギーに頼らない生活を。

省エネ家電をたくさん使うような暮らしには共感できないということで、池尾家ではエネルギーをなるべく使わない生活をしています。設備で取り入れているのは太陽熱でお湯を沸かす太陽熱パネル。住宅で消費されるエネルギーの約3割は給湯と言われていますが、太陽熱を利用してお湯を作ることで、ガスの消費量を減らしています。最近では、太陽熱パネルで温めたお湯を給湯器に接続することができるので、お風呂だけでなく、キッチンや洗面所でお湯を使う時にも効果を発揮しています。太陽熱パネルは薪小屋の屋根に設置していますが、水道の水圧で屋根上まで水を送り、高低差の圧力で給湯器までお湯を送るので、エネルギーを全く使っていません。アナログな設備なので、メンテナンスも簡単です。停電してもお湯が使えるという利点もあります。池尾家のエネルギー源は、電気、プロパンガス、薪、太陽熱と多様で、1つのエネルギーに頼っていないので、災害時のライフライン遮断対策としても役立てられます。

優しい木の風合いに
包まれた時間

食卓は、ロースタイル。
腰を据える感じが
ゆっくりとしていて
心地いい。

ここは、もうひとつのキッチン。
大きくなったら
お母さんのお手伝いを
するのかな。

味噌汁の匂いがする朝は
いいものです。

ポカポカと
玄関からじんわり
広がる温かさ。

ほっぺから
温かさが伝わってくるね。

こどもが大きくなっても
ずっと置いておきたい雑貨たち。

いつの間にか、少しずつ、
いろんなことが
できるようになっていくね。